堀口 三恵子
(社)堀口三恵子美容アカデミー理事長
東京医療専門学校 教員養成科 美容鍼灸講師
(社)グローバル・ブライズ・ビューティー協会理事
(社)日本エステティック協会認定エステティシャン
操体法セラピスト
堀口三恵子
略歴
群馬県生まれ
高校時代は山岳部と聖歌隊に所属
医療系の家系に生まれ、祖母の影響で鍼灸師を目指す。
東京医療専門学校に在学中に同級生(山本先生)から「操体法」を知り、原宿「ふわっとハウス」(当時)渡辺栄三先生に、その後早稲田大学の石井康智先生の操体法を学ぶ。
理学療法科で手技療法(カイロプラクティック)を学び、鍼灸治療と手技療法の組み合わせ治療を修得する。
鍼灸専門学校卒業後、西條クリニック理学療法科で鍼灸治療を開始。
「顎関節治療」をおこなうことで、肌が白くなる、くすみ、むくみ、ニキビがなくなると好評を得て、美容に特化した技術とメニューを提案し、痩身治療を始める。これがコウ鍼灸治療院の美容鍼の原点となる。
美容に特化したメニューに必要なエステティシャン資格を取得する。
西條クリニック退社後に女性専用鍼灸院の副院長となり、美容に特化した痩身とエステ、美容鍼の治療を始める。
飯田橋の鍼灸整骨院の副院長となり、タッチフォーヘルスのインストラクター資格、さらにアプライドキネシオロジー、オステオパシーの技術を修得する。
平成14年に「コウ鍼灸治療院」を開業する。
堀口三恵子の家系
高祖父宗安が長野の善光寺参拝の帰路立ち寄った群馬県で疫病が流行り、その地で治療しているうちに群馬に居を定める。
宗安の息子、聴診器の使い方が上手な栄一(鍼灸師)が地元で鍼灸院を経営しており、その娘コウ(祖母)の名前からコウ鍼灸治療院と付ける。
祖母が鍼灸師である父(栄一)の治療で自分の体調が良くなったことや、鍼灸の良さを教えてくれたことで自然と鍼灸の道に進んだ。
業績
論文
- 全日本鍼灸学会 美容鍼施術におけるMRI画像評価の検討
-咬筋と表在性筋膜に着目したパイロットスタディ-
堀口三恵子,他. 美容鍼施術におけるMRI画像評価の検討-咬筋と表在性筋膜に着目したパイロットスタディ-.全日本鍼灸学会雑誌.2021;71(3) ,130-137.:
講演
- 2007年10月19日 第19回 学校法人呉竹医学会 学術大会 「美容鍼灸の普及と問題点」
- 2008年1月27日 予防医療臨床研究会 「近代鍼灸美容セミナー」
- 2008年2月3日 東京都鍼灸師会 学術研修「美容鍼灸」-開業女性鍼灸師の実際-
- 2008年2月28日 呉竹鍼灸柔整専門学校 特別授業 「美容はり」
- 2008年3月2日 公益財団法人東京都鍼灸師会 学術講演 「美容鍼」
- 2008年10月26日 公益財団法人 富山県鍼灸マッサージ師会 「美容鍼灸」
- 2008年12月7日 社団法人東京都はり・きゅうあん摩マッサージ指圧師会 東京都委託施術者学術講習会 「美容鍼療法~効果のある美容鍼の実践」
- 2009年3月1日 四国医療専門学校 「症状別による美容鍼の実践法」
- 2009年3月22日 国際中医美容研究会 「美容鍼」
- 2009年9月5日 福岡医健専門学校 鍼灸科特別講義「美容鍼セミナー」
- 2009年10月11日 第5回公益財団法人日本鍼灸師会全国大会青年部 教育講演 美容鍼
- 2009年11月15日 北海道高等盲学校附属理学研修センター 「美容鍼灸の理論と実際」
- 2010年10月30日 (社)鳥取県鍼灸師会 「美容鍼灸について」
- 2011年11月24日 美容鍼灸フェスタ2011 「美容鍼」
- 2012年1月21日 福岡医健専門学校 「特別講座 美容鍼セミナー」
- 2012年6月9日 第61回全日本鍼灸学会学術大会 ランチョンセミナー「臨床に役立つ円皮鍼治療と美容鍼灸」
- 2012年11月3日 美容鍼灸フェスタ2012 「美容鍼」
- 2012年11月11日 第5回なでセラセミナー 「美顔術講座」
- 2013年1月20日 第5回盛医伝統医学会 「特別講演 美容鍼」
- 2013年5月12日 中央医療学園専門学校 「学術講習 美容鍼」
- 2013年7月21日 セイリン株式会社 「美容鍼セミナー」
- 2013年9月2日 沖縄統合医療学院 「特別講座 美容鍼」
- 2013年9月8日 柔整鍼灸臨床研究会 「身体の骨格・姿勢分析など顔に影響を与える矯正方法」
- 2013年11月24日 セイリン株式会社 「美容鍼セミナー」
- 2014年11月30日 セイリン株式会社 「美容鍼セミナー」
- 2015年9月20日 東日本医療専門学校 「美容鍼セミナー」
- 2015年11月29日 ダイヤ工業株式会社 「美容鍼セミナー」
- 2016年2月8日 日本エステティック協会 福岡ビューティーワールドジャパン 「腸内フローラと美肌の密接な関係とは」
- 2016年3月14日 日本エステティック協会 広島 「腸内フローラと美肌の密接な関係とは」
- 2016年3月28日 日本エステティック協会 愛知県 「腸内フローラと美肌の密接な関係とは」
- 2016年9月5日 日本エステティック協会 富山県 「腸内フローラと美肌の密接な関係とは」
- 2016年9月12日 マツモトキヨシ研修講座 「美容と健康に役立つパッチ鍼とお灸のお話」
- 2017年1月23日 日本エステティック協会 愛知 「脚の瘦身に活かす東洋医学と解剖生理学」
- 2017年2月8日 日本エステティック協会 埼玉県 「腸内フローラと美肌の密接な関係とは」
- 2017年3月13日 Taipei Chinese Medical Association 9th Taipei Traditional Chinese Medicine International Forum 台北 研究発表
- 2017年4月20日 マツモトキヨシ研修講座 「パッチ鍼の効果的な使用方法」
- 2017年5月28日 東京医療専門学校呉竹総会 学術講座 「リスク管理に基づいたカウンセリング法と筋膜運動をいかした美容鍼」
- 2017年6月21日 日本エステティック協会 埼玉県 「脚の瘦身に活かす東洋医学と解剖生理学」
- 2017年11月12日 群馬県柔道整復師協同組合 「美容に活かす操体法と美容鍼のリスク管理」
- 2017年12月3日 第3回鍼灸学会Tokyo研修会 「美容鍼の治療戦略と評価とリスク管理」 秋山恵一先生と討論
- 2018年1月28日 (一社)岡山県鍼灸マッサージ協会 学術講習会 「女性のチカラになるセミナー2018」
- 2018年3月19日 Taipei Chinese Medical Association 9th Taipei Traditional Chinese Medicine International Forum 台北 研究発表
- 2018年4月24日 日本エステティック協会 神奈川 「腸内フローラと美肌の密接な関係とは」
- 2018年7月23日 日本エステティック協会 愛知県 「腸内フローラと美肌の密接な関係とは」
- 2018年10月20日 第30回 学校法人呉竹医学会 学術大会 「筋膜療法を取り入れた美容鍼~運動鍼による歪み治療~
- 2019年3月7日 大川学園医療福祉専門学校 特別授業「リスク管理に基づいたカウンセリング法と筋膜運動をいかした美容鍼」
- 2019年5月12日 第68回 公益社団法人 全日本鍼灸学会 学術大会 「頭部及び顔面部の鍼施術に対するMRI画像評価の検討」ポスター発表
- 2019年5月18日 日本エステティック協会 東京 「エステティシャンのための下肢・下腹部・臀部の筋膜痩身の解剖学的理解とテクニック」
- 2019年6月11日 日本エステティック協会 北海道 「腸内フローラと美肌の密接な関係とは」
- 2019年6月25日 (一社)グローバルブライズビューティー協会 「ウエディング瘦身~デコルテ・二の腕~」
- 2019年7月1日 日本エステティック協会 愛媛県 「脚の痩身に活かす東洋医学と解剖生理学」
- 2019年8月3日 Slovenia Villa Bella Vista スロベニア 研究発表
- 2019年8月20日 日本エステティック協会 宮城県 「腸内フローラと美肌の密接な関係とは」
- 2019年8月27日 日本エステティック協会 三重県 「筋膜のしくみと実践的痩身トリートメント」
- 2019年7月11日 関西医療学園専門学校 特別講座「美容鍼研究」
- 2019年9月8日 第2回 国際美容鍼灸学会 研究発表
- 2019年11月10日 FACE アジア太平洋美容中医学フォーラム 台北 研究発表
- 2019年11月16日 加齢画像研究会 第8回学術集会 研究発表
- 2019年11月17日 福岡医療専門学校 校友会 「美容鍼」
- 2020年11月22日 第1回美容鍼灸Academic Conference 研究発表
- 2020年10月25日 セイリン株式会社 「頭蓋筋膜療法を取り入れた美容鍼」
- 2021年6月6日 セイリン株式会社 コウ式美容鍼セミナー 「頭蓋筋膜療法を取り入れた美容鍼」
- 2021年7月17日 学校法人呉竹学園 東京医療専門学校 「女性のためのウェルビーイング特別臨床講座」
- 2021年8月22日 セイリン株式会社 コウ式美容鍼セミナー 「picorinaパルスの実践法」
寄稿
- 2006年 医道の日本社 医道の日本 臨時増刊 美容と鍼灸 P34~38
- 2014年3月 医道の日本社 医道の日本 月刊誌 美容鍼で健康美人 ほうれい線・深いほうれい線・むくみに対する円皮鍼を使った美容鍼治療 P4~37
- 2021年9月 日本エステティック協会 月刊誌 エステティシャンのための下肢・下腹部・臀部の筋膜痩身の解剖学的理解とテクニック 寄稿 P26~27
メディア
新聞
- 2007年7月25日 日経経済新聞 日経MJ 「ヒット予感 顔に鍼灸」
テレビ
- 2008年 日本テレビ 鉄腕ダッシュ 美容鍼
- 2008年 東京MXテレビ 美容鍼 2008年
- 2009年 フジテレビ にじいろジーン 美容鍼
- 2011年 日本テレビ PON 美容鍼
雑誌
- 2005年 Hanako 995 マガジンハウス 効く、からだ メンテナンス P103
- 2005年 大人の東京 阪急コミュニケーションズ P104東京でリラックスする100の方法
- 2006年 医道の日本 医道の日本社 臨時増刊 美容と鍼灸 P34
- 2006年 5月号 VERY 光文社 ハリのある肌は顔鍼で
- 2008年1月 OZmagazine スターツ出版 P39
- 2008年5月 Bodyプラス 実業の日本社 「その道の専門家に聞く」
- 2009年3月 女性セブン 小学館 美容鍼をうってキューっと小顔に
- 2010年5月 Hanako 971 マガジンハウス 最新ビューティー
- 2010年 美STORY 光文社 ドライアイ鍼 P251
- 2011年12月 エッジスタイル 双葉社 2011年12月
- 2011年 Numero 51 扶桑社 豊田エリーおすすめの店
- 2011年 Oggi Wedding 小学館 P67
- 2012年5月 Hanako 108 マガジンハウス 「とにかく痩せたい」
- 2013年1月 東京エステ・ホテルスパ美シュラン
- 2014年3月 医道の日本 医道の日本社 月刊誌 美容鍼で健康美人 P34~37
ラジオ
- 2011年9月12日 FM FUJI TOKYO 美容鍼について
院長
インタビュー
「美容鍼」のパイオニアであり、学会で論文を発表されるなど、学術的に美容と鍼灸の効果を研究をされている堀口先生に「美容鍼」のお話を聞きました。
先生が鍼灸の世界に進んだきっかけはなんですか?
代々医療系の家系だったのが大きかったと思います。
高祖父は医師で、曾祖父は鍼灸師で地元でとても有名人でした。
そんな家系で生まれ育ったので、最初は医師になろうと思っていたのですが、祖母が体調を崩して手術が必要になった時に、曾祖父が鍼を打って治したんです。
そんな体験をした祖母から鍼灸の良さを聞いていて、曾祖父の影響もあり、自然と鍼灸師の道を目指すことになりました。
ちなみに、当院名は、祖母の名前「コウ」からいただいたものです。
コウ鍼灸治療院では「美容鍼」だけではなく、他の施術と組み合わせて行われますね
はい、顔に鍼をすることがクローズアップされがちですが、「美容鍼」は、鍼だけではなく、様々な施術と組み合わせて、全身に対して行われるべきものです。
全身に対して施術を行うのが鍼灸治療の基本的な考え方で、全身の一部としての顔という位置付けです。ですから顔面だけの問題ではなく、全身の骨格のゆがみを整えていくことで顔のゆがみも持続的に改善していくということです。
また、一人ひとりに合わせて施術内容が変わるのも基本です。
例えば、男性の咬筋のボリュームと女性の咬筋のボリュームが全然違うように、力仕事をする人と力仕事をしない人の咬筋の強さも違います。
このぐらいの症状であれば鍼で、この人だったら操体法で、手技療法、運動療法が効果的かなとか、そういうニュアンス的な経験則から導かれるものがあります。
一人ひとりが持つパーソナルな身体的な特徴や症状がありますから、施術方法もひとつのパターンに当てはめることができないのです。
鍼が効果的な人もいれば、そうじゃない人もいる。一人ひとりに合わせた施術が大切です。
「操体法」との出会いについて教えてください。
専門学校の同級生、といっても年齢はかなり上だったのですが、その方から操体法というものを知りました。
その同級生から、操体法の創始者・橋本敬三先生の直弟子である渡辺栄三先生を教えてもらい、先生のもとで操体法を学びました。
当院を開設した時の最初のパンフレットにも書いたものなんですが、本当に人間の身体や骨は心の声や感情に影響されます。
これはオステオパシーの考え方でもありますが、人間の身体は驚きや悲しみに反応して、それを記憶していきます。びっくりすれば身体が硬直しますし、ショックなことがあれば脱力して気が抜けてしまいます。
身体はすべての構造と機能が繋がっていて互いに関係しあっています。そしてあるべき構造を保とうと自己調整するメカニズムが備わっています。
骨のゆがみを整え、筋肉を温めることで身体の不調が、心地よさに変わっていく。
「身体の声を聞く」ことを、私は開院当初からの絶対的な理念としています。
そして、お客さまとの出会いに感謝する気持ちも常に忘れず大切にしています。
美容鍼は小顔に効果があるそうですが、そのメカニズムを教えてください
美容鍼で使うツボは、顎関節症治療と同じツボを使います。
顔が太る、大きくなる理由の一つに「エラが張る」ことが挙げられますが、その原因の一つが咀嚼筋です。
咀嚼筋は噛む筋肉で、噛み締めが強い方などはこの筋肉が成長してしまい、結果的に「エラが張る」ことになります。
美容外科などでは小顔の施術にはボトックス注射が用いられますが、このボトックス注射は、まさに咀嚼筋に対して注射を行い、咀嚼筋の成長を止める効果があります。ということは、咀嚼筋が減少させることができれば顔の容貌を整えることができる、咀嚼筋にアプローチできれば、鍼でも同じ効果を得られるのではないかというのが仮説です。
実際に鍼を刺してみると、顔の左右差が整い、無駄なボリュームがなくなることで顔がすっきりとします。それにより美容上のメリットが生まれたり、噛むストレスが緩和されたりすることで、結果的に小顔に見せる効果が生まれるのです。
「美容鍼」は、顎関節治療から生み出されたそうですね?
はい、今では顔への鍼といえば「美容鍼」「美顔鍼」と言われるように美容面が注目されていますが、今から20年ほど前までは、顔への鍼は「顎関節症」治療を目的としたものが中心でした。
すでに鍼は額関節症に非常に有効だと多くの論文で言及されていて、鍼が効くというエビデンスが数多くあります。
額関節症には1度から6度までの段階がありまして、1度を軽症とすると6度が重症で、口が開かない、痛みが激しいなど、手術が必要な段階です。
この症状の度数でいいますと、1度から3度までは鍼が非常に有効だという論文、エビデンスが多数存在しています。
鍼のほかには、電気治療や、マニピュレーションというマッサージ治療で効果があるなど、物理的療法が有効であるという論文も数多くあります。
そのほか、「顔面神経痛」や、「三叉神経痛」などの痛みの緩和、眼精疲労や鼻炎・花粉症などの治療として顔面に鍼を刺すという認識が業界では一般的で、美容効果についてはほとんど認知されていませんでした。
私も当時勤めていたクリニックで顎関節症治療のための鍼治療のほかに、SSP療法(低周波治療)を行なっていましたが、電気と鍼では治療後の顔面に決定的な違いがありました。それが美容的な効果です。
実際、鍼治療を行っていると、顎関節症に対する効果のほかに美容面の効果も視覚的に気が付いていました。
顔面への鍼治療で、すごく喋りやすくなる、滑舌が良くなる、嚥下が楽になる、といった顎関節症の症状軽減のほかに、くすみが抜ける、顔色が良くなる、吹き出物がなくなる、アゴのたるみがなくなる、顔色が良くなる、といった変化が表れる患者さんが多かったのです。
患者さん自身もその変化を自認して、「顎関節症は良くなったけど、先生、また顔の鍼をしてほしいです」という声が多かったので、当時勤めていたクリニックで美容メニューとしての鍼治療を開始しました。
そして鍼の美容面への効果の研究を重ねていき、今の「美容鍼」に繋がっています。
現在の治療方法が確立されていった経緯を教えてください
顎関節治療をきっかけに、美容への鍼の効果を研究するために、解剖学の研究を始めました。
例えば、眼瞼下垂という美容疾患がありますが、皺眉筋にアプローチしていくと眼瞼下垂に効果があるのでは、といった仮説を検証していくことです。
それには過去の論文が大いに参考になり、すでにあるエビデンスをもとにして、施術方法を組み立てていきました。
ツボというのは平面的なものではなく、立体的な位置が非常に重要です。
顔は平面ではありませんから、鍼を刺すにしても、太さや深さ、刺激の強さやアプローチする位置を知ることが必要です。また、実はツボの位置は一人ひとり大きく違っていますので、解剖学や皮膚科学の研究が欠かせないと判断した理由でもあります。
研究から論文執筆をされた経緯を教えてください
鍼をするとすごくスッキリするし、むくみが抜けるといった効果は視覚的にわかるのですが、その効果がなぜ起こるのかという医学的根拠や視覚的な解剖画像はありませんでした。
鍼をすることで、口が開きやすくなったとか、VAS( Visual Analogue Scale)による評価で、顎関節の痛みが軽減したというデータは大量にあります。
ということは鍼が咬筋にアプローチできているはずだと仮説を立てました。
顎関節は、咬筋(咀嚼筋)と側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋から成ります。
咬筋は美容外科の小顔療法でボトックス注射を打つ筋肉で、鍼治療でもその筋肉に影響を与えることができるということは、小顔効果を生み出せている根拠となる可能性があります。
実際、視覚的に見ると咬筋への施術後は顔がスッキリしますし、写真を撮って比べてもその効果ははっきり分かります。
ところが、写真でのいわゆる“ビフォー・アフター”では医学的な証明にはなりません。視覚や体感で効果を得られていたとしても、医学的に効果が認められるかといえば話は別で、しっかりとしたエビデンスが無ければ医療としては認められません。
現在は民間療法の域を出ない美容鍼をさらに1段階引き上げ、きちんとした治療法として確立するためには、医学的効果の証明が不可欠であることも研究・論文への大きな動機でした。
そんな時、私が講師を務めている呉竹学園で、同じく講師をしていた美容皮膚科の先生からの推薦で研究を始めるチャンスを得ることができまして、本格的に研究を進めることになりました。
論文執筆で苦労されたことはありますか?
それまで顎関節症に対する鍼治療の効果を論じた論文は多数存在していましたが、美容に対する効果を論じた論文は皆無。完全に手探りの状況からのスタートでした。
当初は、チームメンバーの一員として執筆に加わる予定だったのですが、紆余曲折あり、私がチームの代表として進めることになりまして、MRIの撮影一つにしても、全て自分が責任を持たなければならないというのも大変苦労した点です。
研究では様々な知見を持つ先生方と協力して臨床を行うことができて、MRIでの画像撮影の結果などを踏まえ、2017年に慶應大学の研究会で研究結果を発表し、2021年には全日本鍼灸学会に論文を提出しました。
この研究により、美容鍼施術によって、咬筋や筋膜といった顔面の皮下組織の変化が確認できたことで、美容鍼施術の効果がMRI画像で評価できる可能性を示すことができました。
さらに現在はその論拠をより強固にするために新たな論文執筆のための研究を行なっています。
美容鍼の研究は「美しさ」の解明に繋がりそうですね。
私も非常に興味があるところですが、「美容鍼ってキレイになるよね」が論文の本題ではありません。
「キレイになる」という概念的なものではなくて、鍼が咬筋に対してどんな組織学的な変化を生んでいるかの裏付けを取ったということなんです。
医師の前で論文を発表したときに「じゃあ咬筋が減ることはいいことなんですか?」という質問を受けたんだけど、そこが果たして正しいどうかは私にもわからない。今後の研究の課題であると思います。
先生が追い求める究極の美容とはなんでしょう?
美容における究極というのは、医学においても同じなのですけど、「何もしないこと。何もしなくてもキレイになること」に尽きると思っています。
それは医者も同じ思いのはず。最終的に思考とかイメージでキレイになったり健康になること。何も刺激をしないことが一番だという考え方です。
トップアスリートを教える指導者も、何かの刺激で変えるのではなく、内なるマインドを変えるという指導をされていらっしゃいます。
それと同じで、刺激を与えずにキレイになるのが究極といえます。
もちろん、私たちは刺激を与えてお金をもらってるのだけれど、当院の常連のお客さまは、私とおしゃべりして帰っていくだけでも顔色が良くなっちゃいますよ(笑)ー